マジック

千円札を一万円札にするマジックがある。

マジシャンが千円札を取り出して、それを小さく小さく畳んで広げていくと、一万円札になっていたりする。夢がある。ドリーム。一生そうやって暮らしたい。

しかし、逆に一万円札を千円札に変えるマジックって、あんまり見た記憶がない。

千円札と一万円札にするのも、一万円札を千円札にするのも、紙から紙だ。どちらも労力としては同じはずである。やってできないことはないだろう。

でも、マジシャンが意気揚々と一万円札を取り出して、小さく小さく畳んで広げて、千円札に変えてしまったらどうだろう。観客の第一声としては「あー」ではないだろうか。

だって、一万円札を千円札にしたことがあるもの。

あるときはギャンブルで、あるときは飲み会で、あるときは公共料金の支払いで。気がついたら財布の中の一万円札が千円札に変わっている。知ってる。わざわざマジックで見せてもらわなくてもいい。

でもそのマジシャンは、さらに千円札を小さく小さく畳んで広げて、まいばすけっとのレシートと小銭にしてしまう。

それも知ってる。